少し踏み込む”という選択 ― 本音に触れた瞬間、仕事は動き出す

仕事を長く続けていると、「ここまでは踏み込まない方が無難だ」という感覚が自然と身についてきます。相手の事情に立ち入りすぎない、聞かれないことは言わない、波風は立てない。それ自体は大人の判断であり、社会人としての処世術でもあります。

ただ、最近つくづく感じるのは、仕事が前に進む瞬間というのは、たいてい“少し踏み込んだ時”だということです。

たとえば打ち合わせの終盤。条件や数字の話は終わっているのに、どこか話がまとまりきらない。そんな時に思い切って「率直に言うと、何が一番引っかかっていますか?」
と一歩踏み込むと、相手の本音が出てくることがあります。

それは予算の話だったり、社内事情だったり、あるいは「実は前に失敗した経験があって…」という感情面の話だったり。出てこなかった“核心”に触れた瞬間、空気が変わるのを何度も経験してきました。

もちろん、踏み込み方を間違えれば不快にさせてしまうこともあります。だからこそ大切なのは、勢いではなく覚悟です。「相手を論破するため」でも「話を有利に進めるため」でもなく、「きちんと理解したい」「本当の前提を共有したい」その姿勢があるかどうか。

分かったのは、踏み込むこと自体が評価されるのではなく、踏み込んだ“後の振る舞い”こそが信頼を左右するという点です。本音を聞いたあと、受け止めるのか、否定するのか、黙って引き取るのか。その一つひとつが、相手の記憶に残ります。

無難でいることは楽です。でも、無難なままでは関係性は深まりません。少しだけ勇気を出して踏み込む。その積み重ねが、「この人とは話ができる」という評価につながっていくのだと思います。

今の自分だからこそできる踏み込み方がある。そう感じながら、今日も目の前の相手と向き合っています。