仕事を続けていると、若い頃には見えなかったものが、ふと見える瞬間があります。
それは大きな成功を収めた時でも、派手な成果が出た時でもありません。むしろ、何事も起こらなかった一日の終わりに、静かに訪れる感覚です。
屋外広告の仕事は、トラブルが起きて初めて注目されがちです。
看板が倒れた、破損した、クレームが入った──そうした事態が起きれば、誰もが気づきます。しかし本当に価値があるのは、そうならないように日々積み重ねられている準備や配慮なのだと、年を重ねるにつれて強く感じるようになりました。
若い頃は「目に見える成果」を追いかけていました。
数字、件数、スピード。
もちろんそれらは今でも大切です。ただ、今はそれと同じくらい、「何も起きない状態を保つこと」に重みを感じています。
看板が今日もそこに立っている。
誰からも連絡が来ない。
それは偶然ではなく、多くの人の知恵と手間と責任感の上に成り立っています。協力会社の設計や施工、点検の積み重ね。そのすべてが、当たり前の日常を支えています。
声高に「すごい仕事をしています」と言う必要はありません。
むしろ、静かに、淡々と、やるべきことをやり続ける。
その姿勢こそが、時間をかけて信頼をつくっていくのだと思います。
経験を重ねるということは、派手になることではなく、
余計な力を抜けるようになることなのかもしれません。
そして、目立たない価値に目を向けられるようになること。
今日も何事もなく一日が終わる。
その「何もなかった」を、きちんと大切にできるかどうか。
そこに、長く仕事を続けるための答えがあるように感じています。