人の力を借りることが、会社を強くする

以前の私は、「自分が頑張れば何とかなる」と思っていました。

仕事を覚える。

経験を積む。

知識を増やす。

自分自身の力を高めることが、会社を強くすることだと思っていたのです。

もちろん、それも大切です。

経営者として、自分自身が成長することは欠かせません。

けれど、仕事を長く続けていると、それだけでは足りないことに気づきます。

会社には、一人ではできないことがたくさんある。

そして、一人でできないことを無理に抱え込むよりも、誰かの力を借りたほうが、より良い仕事ができる。

そんな場面を、何度も経験してきました。

私たちの仕事も、そうです。

看板の設計が得意な人。

施工を得意とする人。

電気や設備に詳しい人。

広告の企画を考える人。

それぞれに、得意な分野があります。

すべてを自分たちだけでやろうとすれば、時間もかかります。

そして、無理に自分たちでやれば、専門家ほどの品質を出せないこともあります。

だったら、その道のプロにお願いする。

分からないことは聞く。

必要なところでは、力を借りる。

一見すると、自分たちの力が足りないようにも見えます。

でも、私はむしろ逆だと思うようになりました。

人の力を借りられる会社は、強い。

なぜなら、自分たちだけでは持っていなかった力を、必要なときに組み合わせることができるからです。

以前、ある小さな案件を協力会社に相談したことがありました。

その会社の設備では対応しにくいということで、別の会社を紹介していただきました。

紹介された会社の名前を聞いて、私は驚きました。

以前、まったく別の仕事でお願いしたことのある会社だったのです。

しかも、普段お世話になっている協力会社と、その会社は旧知の仲でした。

「こんなところでつながっていたのか。」

そんな驚きがありました。

そして、紹介先へ伺ってみると、すでに話が伝わっていました。

こちらが一から説明する必要もなく、仕事は驚くほどスムーズに進みました。

そのとき、改めて感じました。

自分の会社だけで仕事をしているつもりでも、実際にはそうではない。

見えないところで、たくさんの人とのつながりに支えられている。

そして、そのつながりがあるからこそ、一人ではできない仕事にも対応できる。

これは、とても大きな力です。

ただし、人の力を借りるということは、何でも人任せにすることではありません。

そこには、責任があります。

誰にお願いするのか。

その人を信頼できるのか。

任せた仕事をきちんと確認するのか。

そして、自分たちも相手から「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえる存在であるのか。

一方通行では、関係は続きません。

お互いに力を貸し合える関係だからこそ、仕事は強くなっていきます。

年齢を重ねるにつれて、「自分がどれだけできるか」よりも、「誰と、どう仕事をするか」を考えることが増えました。

これは、経営者として大きな変化だったと思います。

一人で全部できる会社を目指すのではなく、それぞれの得意分野を持った人たちと一緒に、より良い仕事ができる会社を目指す。

そのほうが、会社の可能性は広がります。

そして、会社の可能性が広がれば、お客様に提供できる価値も広がります。

結局のところ、会社の強さとは、社内にどれだけ多くの能力があるかだけではないのかもしれません。

必要なときに、必要な人とつながれること。

そして、その関係を長く大切にできること。

それもまた、会社の大きな力なのだと思います。

これからも、私は一人で何でもできる人を目指すのではなく、周りの力を素直に借りられる人でありたい。

そして、自分もまた、誰かが困ったときに力を貸せる人でありたいと思います。

人は、一人では限界があります。

会社も、一社だけでは限界があります。

だからこそ、人と人がつながる。

会社と会社がつながる。

それぞれの力を持ち寄る。

その先に、一人では見ることのできなかった景色が見えてくる。

長く仕事を続けてきた今、そんなつながりこそが、会社にとって何よりの財産なのだと思っています。